No.36新着 オッズはどう決まるのか 売り上げを当たり票で分けるしくみと、取消・同着・不成立のときの払い戻し
JRA の配当は、券種ごとの売り上げから決まった割合を残し、それを当たった票で分けて決まります。外れた人の分を当たった人で分けるしくみなので、オッズは締め切りまで動き、同着になると発表のオッズとは違う配当になります。最低でも買った額は戻り、当たりがいなければ100円につき70円か80円が戻ります。
本文と出典
【配当は「みんなの賭け金を当たった人で分ける」】
JRA の馬券は、主催者が先に倍率を決めて客と勝負する形ではありません。そのレースのその券種に集まったお金をひとまとめにし、決まった割合を差し引いた残りを、当たった票の数で割って配当にします。この方式をパリミュチュエル方式と呼び、競馬法では「勝馬投票法」と書かれています。
競馬法第8条では、売り上げ(取消などで返したお金を除いた額)に JRA が定める割合をかけた額を、当たった馬券に按分して払い戻すと決めています。その割合は「100分の70以上」で、国が定める上限以下の範囲です。
JRA の示す計算の式は「(W+D/P)×R」です。W は当たった馬(組)の馬券の合計、D は走ったけれど当たりにならなかった馬の馬券の合計、P は当たりの馬(組)の数、R は払戻率です。外れた人のお金 D を当たりの数 P で分け、当たった人自身のお金 W に足して、払戻率をかける、という意味です。
(出典:JRA「馬券のルール」払戻金の計算方法 https://www.jra.go.jp/kouza/baken/index.html / e-Gov 法令検索「競馬法」第8条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000158 / e-Gov 法令検索「競馬法施行規則」第9条・付録第六 https://laws.e-gov.go.jp/law/329M50010000055 )
【例で計算すると】
わかりやすくするため、架空の数字で単勝を考えます。あるレースの単勝の売り上げが1,000万円で、そのうち200万円がA馬に入っていたとします。A馬が勝つと、払戻率80%をかけた800万円を、A馬の単勝を買った200万円分で分けます。100円あたり400円が戻るので、オッズは4.0倍です。
同じレースでA馬に入ったお金が400万円なら、100円あたり200円、2.0倍になります。オッズは馬の強さを主催者が評価した数字ではなく、買った人たちの票の偏りを映した数字です。
複勝は3着までの馬がどれも当たりになるので、P が3になります。外れた馬に入ったお金を3等分し、3頭それぞれの買い手に分けます。5〜7頭立てのレースでは、複勝は2着までの払い戻しです。
(出典:JRA「馬券のルール」発売・払戻金の計算方法 https://www.jra.go.jp/kouza/baken/index.html )
【券種ごとの払戻率】
差し引く割合は券種で違います。2014年6月7日以降、単勝・複勝が80%、枠連・馬連・ワイドが77.5%、馬単・3連複が75%、3連単が72.5%、WIN5 が70%です。この数字と回収率の関係は No.13 に書きました。
(出典:JRA「馬券のルール」勝馬投票法ごとの払戻率 https://www.jra.go.jp/kouza/baken/index.html )
【端数と、いちばん少ない払い戻し】
競馬法第10条では、計算して出た1円未満の端数は切り捨て、切り捨てた分は JRA の収入になると決めています。
人気が一頭に集まりすぎると、計算上は買った額より少ない配当になることがあります。この場合、競馬法第8条2項により、買った額(100円なら100円)がそのまま払い戻されます。これを「元返し」と呼びます。
JRA はさらに「JRAプラス10」として、元返しになる場合に10円を足して110円を払い戻しています。全レース・全券種が対象で、オッズ表示も1.1倍になります。2026年は9月27日までに520件あり、内訳は単勝8件・複勝504件・ワイド8件で、足した金額は合計約34.5億円です。ただし、足す分まで含めると払い戻しの総額が売り上げを超えるときは、上乗せなしの100円元返し(1.0倍)になります。同じ期間にそれが68件ありました。
(出典:e-Gov 法令検索「競馬法」第8条・第10条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000158 / JRA「JRAプラス10」 https://www.jra.go.jp/kouza/plus10/index.html )
【当たった人がいないとき(特払い)】
当たりの馬券を買った人が一人もいないとき、WIN5 以外では、その券種を買った人全員に払い戻しがあります。払戻率が70%台の券種は100円につき70円、80%の単勝・複勝は100円につき80円です。競馬法第8条3項では、勝った馬以外の走った馬に投票した人へ分けると決めています。WIN5 だけは払い戻しをせず、次回へ繰り越します(キャリーオーバー)。
(出典:JRA「馬券のルール」的中者がない場合 https://www.jra.go.jp/kouza/baken/index.html / e-Gov 法令検索「競馬法」第8条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000158 )
【出走取消・競走除外のとき】
馬券を売り始めた後で馬が出走を取り消したり、競走から除外されたりすると、その馬の単勝・複勝と、その馬を含む馬連・馬単・ワイド・3連複・3連単・WIN5 の組み合わせはすべて返還されます。窓口で買った馬券はレース確定後に払戻窓口で返し、ネット投票や UMACA では発表後すぐに残高へ戻します。
枠連は別で、同じ枠に残る馬がいると返還されないことがあります。同じ枠にほかの馬がいなければその枠がらみは返還、ほかに1頭いれば同じ枠どうしの組み合わせだけ返還、2頭いれば返還はありません。
また、売り始めた後に頭数が減っても、券種や複勝が何着までかは売り始めたときの頭数のままです。取消や騎手の変更を理由にした買い直し(取り替え)はできません。
(出典:JRA「馬券のルール」返還・発売 https://www.jra.go.jp/kouza/baken/index.html / e-Gov 法令検索「競馬法」第12条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000158 )
【同着のとき】
1着が2頭なら、1頭を1着、もう1頭を2着とみなし、さらに3着の馬を決めて扱います。2着や3着の同着も同じ考え方です。注意したいのは、ワイドの3着どうしの組み合わせと、3連複・3連単で3着どうしを含む組み合わせは当たりにならない点です。
同着になると、式の P(当たりの数)が増えて外れた人のお金を分ける先が増えるため、配当は発表された最終オッズとは違う率になります。JRA は、最終オッズは当たりが1頭(1組)だと仮定した概算だと説明しています。
(出典:JRA「馬券のルール」同着時の取扱い・払戻金の計算方法 https://www.jra.go.jp/kouza/baken/index.html )
【競走不成立・中止、着順の確定】
着順の確定前に、災害や投石などの妨害で競走に重大な支障があったと裁決委員が認めたときと、決められたコースと違うコースで走ったときは、競走不成立となり、馬券は返還されます。競走を中止した馬など、出走した人馬が原因のものは、原則として不成立になりません。ただし、その馬がコースをふさいで競走が続けられなくなった場合は不成立になります。売り始めた後でレースを取りやめ、別の日に行うことになったときも返還です。
払い戻しは、レース後に裁決委員が確定した着順で行い、後から成績上の着順が変わっても払い戻しは変えません。審議中は着順が変わることがあるので、確定までは馬券を捨てないよう JRA は呼びかけています。当たり券と返還券を払い戻せる期間は60日間です。
(出典:JRA「馬券のルール」払戻と着順・競走の不成立・払戻期間 https://www.jra.go.jp/kouza/baken/index.html / e-Gov 法令検索「競馬法」第11条・第12条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000158 )
【オッズが締め切りまで動く理由】
売っている間に出るオッズは、その時点までに集まった票で計算した途中の数字です。あとから票が入るたびに W と D が変わるので、オッズも動きます。ある馬に票が集まればその馬のオッズは下がり、ほかの馬のオッズは上がります。締め切った後の最終オッズも、上で書いたとおり当たりが1つだと仮定した概算です。
締め切り直前の動きについては、東京大学マーケットデザインセンターが2025年9月に公開した論文(ワーキングペーパー)があります。日本の競馬の途中オッズを調べ、締め切り直前のオッズの動きが、その馬を買ったときの戻りの良し悪しと結びついていたと報告しています。著者らは、情報を持つ人が最後に賭けるためと解釈し、最終オッズだけを見ても読み切れないものが残るとしています。ほんまかいな予想の手順(No.11)で、14時ごろのオッズに1割の余裕をみているのは、この締め切りまでの動きを見込むためです。
(出典:JRA「馬券のルール」払戻金の計算方法 https://www.jra.go.jp/kouza/baken/index.html / 東京大学 マーケットデザインセンター UTMD-093 "Are Final Market Prices Sufficient for Information Aggregation?" https://www.mdc.e.u-tokyo.ac.jp/?p=7623 )