No.17新着 外れ馬券は経費になるのか 最高裁の2つの判決と国税庁の扱いの変更
最高裁は2015年と2017年に、長年にわたり網羅的に馬券を買って利益を上げた人の払戻金を「雑所得」とし、外れ馬券の代金も経費と認めた。一般の競馬ファンは今も一時所得で、外れ馬券は引けない。
本文と出典
【先に結論】
外れ馬券の代金を経費として引けるのは、払戻金が「雑所得」と認められた場合だけです。国税庁は、いわゆる一般の競馬愛好家は従来どおり一時所得で、外れ馬券の購入費用は引けないとしています。
【2015年の最高裁判決(いわゆる大阪事件)】
最高裁 平成27年3月10日判決(刑事事件。https://www.courts.go.jp/hanrei/84934/detail2/index.html )。
確定申告をしなかったことで起訴された人の事件です。判決の認定によると、市販の自動購入ソフトに自分で分析した条件を設定し、JRA のネット投票で、毎週土日の中央競馬のほとんどのレースを数年以上買い続けていました。1年に10億円前後を買い、個々の的中ではなく長い目で見た差額の利益を狙っていました。
最高裁は、この払戻金を一時所得ではなく雑所得とし、外れ馬券を含むすべての購入代金を経費として引けると判断しました。
【2017年の最高裁判決(いわゆる札幌事件)】
最高裁 平成29年12月15日判決(行政事件。https://www.courts.go.jp/hanrei/87308/detail2/index.html )。
こちらは自動購入ソフトではなく、本人がすべての競走馬や騎手の情報を集めて分析し、予想の確かさと配当の大きさの組み合わせで「購入パターン」を決めて買っていました。6年間、1年に3億〜21億円ほどを買い、どの年も回収率は100%を超えていました。
最高裁は、行為の期間・回数・頻度、利益の規模や期間などを総合して判断するとし、この人の払戻金を雑所得、外れ馬券の代金を経費と認めました。第一審の東京地裁は一時所得としましたが、控訴審と最高裁で覆りました。
【一時所得とされた例】
国税庁の資料によると、別の人の事件(東京地裁 平成28年3月4日→東京高裁 平成28年9月29日→最高裁 平成29年12月20日に上告を退ける)では一時所得とされました。どのような方法で、どの種類の馬券をどれだけ買ったかが明らかでない、というのが理由です(https://www.nta.go.jp/information/other/data/h30/keiba/index.htm )。
札幌事件の第一審も、購入の記録や収支の資料が保存されていないことを、一時所得とした理由に挙げていました。
WIN5 の払戻金については、東京高裁 令和2年11月4日判決が一時所得としています(https://www.courts.go.jp/hanrei/91886/detail2/index.html )。
【国税庁の扱いの変更】
判決を受けて、国税庁は所得税基本通達34-1を2回改めました。
・2015年5月29日:それまで国税庁は、買い方や規模にかかわらず一律に一時所得として扱っていました。自動購入ソフトで網羅的に買い、多額の利益を恒常的に上げている場合を雑所得としました。
・2018年6月29日:自動購入ソフトに限らず、自分で決めた購入パターンで年間を通じてほぼ全てのレースを買い続け、回収率が期間全体で100%を超えていることが「客観的に明らか」な場合も雑所得としました。それ以外は一時所得です。
(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/180517/index.htm )
【雑所得になる場合の計算】
雑所得は「総収入金額-必要経費」で、一時所得のような特別控除50万円や2分の1はありません(所得税法35条)。